山菜

名水わさび 代表

筑間 隆司 さん

岐阜県大垣市

清流の国 岐阜から、貴重な真妻わさびを全国にお届けする。

人生の転機

44歳での出会い

岐阜県大垣市で貴重な真妻(まづま)わさびを栽培している筑間 隆司さん。大手自動車関連会社を早期退職し、わさび農家となった想いをお聞きしました。

ー ご出身はどちらでしょうか?

「生まれは愛知県の名古屋市です。住宅街に住んでおり、周りに畑や田んぼのない環境で育ちました。学生時代は工業系の勉強をして、そのまま大手自動車関連企業に就職しました。」

ー 身近に農業があったわけではなかったのですね。どんなお仕事をされていたのですか?

「入社後は、エンジンの開発企画室で新型エンジンの耐久性などの試験をしていました。その後は自動車向けの半導体にも携わりましたよ。」

ー とても充実したキャリアですね!

「44歳の時に結婚をしまして、岐阜県の本巣市の方に引っ越しをすることになりました。それからは片道2時間かけて会社に通う日々が続きました。さすがに時間がもったいないと感じ、何かできないかなと考え始めるようになりました。そんな時、自宅の裏山に"わさび"が自生しているのを発見したのです!」

就農のきっかけ

13℃の奇跡

ー 裏山でのわさびとの出会いがきっかけだったのですね。

「そこでわさびに興味を抱き、本を読んで勉強を始めたところ、わさびの生育には水温が大切だと知りました。私が発見した本巣の裏山の湧水も”13℃”という、わさびの生育にぴったりの水温だったのです!わさびの産地で有名な静岡や長野も水温が13℃なんですよ。」

ー わさびの生育には水温が大切なのですね!?

「厳密には、水温と”気温”が大切です。13℃〜15℃の気温を保つために、12〜13℃の水が下を流れていることが大切なのです。」

ー その後、どのように就農されたのですか?

「早速、わさび農家さんについて調べたところ、近隣の大垣市で坂野さんというわさび農家さんがいることを知りました。まさに『名水わさび』の創業者です。その方に相談したところ、週末にわさび栽培を勉強させていただけることになり、そこから5年間、平日は会社勤め、週末はわさび栽培の日々を過ごしました。」

ー 5年間もですか!

「当初は2年間の修行を終えて独立するつもりだったのですが...。最終的には先代から「名水わさび」を継ぐことになりました。その時には50歳になっていましたね。」

こだわり

試行錯誤が深める辛み

ー 栽培しているわさびの品種を教えてください。

「真妻という品種を栽培しています。辛味が強くて美味しい品種ですが、それを栽培できる産地は限定されています。合う環境、合わない環境があるのです。私もより良い真妻を栽培するために、わさび田の構造やハウスの構造を何度も変えてきました。」

「真妻はデリケートな品種なため、露地栽培だと根茎の部分が大きくならなかったのです。ハウスにして、気温や湿度、日射量などを整えないとうまく育たないのです。」

ー 今でも試行錯誤を続けているのですね。会社員時代の経験も役に立っているのでしょうか?

「会社員の時、何か上手くいかない時には - 金の卵 - つまり、改善のチャンスだと教わりました。今でもその精神を持ちながら取り組んでいます。」

ー 上手くいかないこともあるのでしょうか?

「ハウスの中をわさびの生育に適した環境に変えていったら、アブラムシにとっても繁殖しやすい環境となったのか、これまでにない被害に遭っています。無農薬で栽培していますし、難しい問題ですね...。」
「ここ大垣の地では、まだノウハウの蓄積が少ないため、ベストな答えがなく試行錯誤を続けていくしかないです。頑張って乗り越えたいと思います!」

ー そのこだわりから、高級料亭や都心からも引き合いが多いとお聞きしました。

「真妻わさびの需要が高く、現在でも待っていただいているお客様が数多くいらっしゃいます。そのニーズに応えるため、ハウスを10棟増やしました。困難を乗り越えて、早く多くのお客様にお届けしたいですね!!」

今後のビジョン

清流の国から、全国へ

ー 本格的に始められて4年ほどですが、わさびへの深い愛情を感じます。どういった点が魅力的なのでしょうか?

「どうすれば上手く育つのか、まだ誰もわからない部分ですかね。静岡や長野のベテランの方が大垣で同じように栽培しても上手くできないでしょう。ここ大垣では、先代が初めてわさび栽培を始めたわけで、自分たちが道を切り拓いている想いは強いです。」

ー その想いが周りの方にも伝わっているのですね。

「これも全ては大垣の水で真妻というブランド品種が栽培できることです。しかも無農薬ですからね!」

ー 今後のビジョンを教えてください。

「現在のわさびの年間生産量は、1位が静岡県で230t。2位に長野県の210tと続きますが、3位は10tまで下がります。私は岐阜県にわさびを普及させ、生産量3位を目指していきたいです。岐阜県や大垣市、企業の方々と協力をして、真妻わさびを特産品にしていきたいですね。」

ー 最後に就農を考えている方にメッセージをお願いします。

「60歳まで会社員をしてから就農も考えたのですが、やはり体力面を懸念して早めに就農しました。後悔は全くしていません。わさび栽培の中でも最高のブランドである真妻わさびを栽培して、共に岐阜県のわさびの生産量を増加していきましょう!」


50歳で本格的に就農してわずか4年で岐阜県を代表するわさび農家となった筑間さん。大垣の水と真妻というブランド品種への愛情が、周りの人にも伝播して大きな希望に変わっています。
今後も名水わさびさんの躍進と岐阜県産のワサビの生産量に注目していきましょう!

お店ではわさびや加工品を販売していますので、近くに行かれた際は是非立ち寄ってみてくださいね!

▼名水わさびホームページ

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